Vol.04
日本にも数年前に進出した、パリ発のオーガニック・スーパーマーケット「BIO C’EST BON(ビオセボン)」。パリ市内にもたくさんの店舗があり、わたしもよく利用しています。 夏の時期にお世話になるのが、このお店が10年前から実施しているベビーシッターならぬ植物シッターのサービス。わたしは植物が好きで、いくつか鉢植えを育てているのですが、この植物の預かりサービスを知るまでは家を長く空けるたびに、頭を悩ませていました。ビオセボンでは、ペットホテルのように7月はじめから8月末までの期間、鉢植えを店舗で預かってくれて、留守中に面倒を見てくれます。店舗に鉢を持ち込むと、その場で名札のようなものを渡され、預ける期間、日向が好きな植物なのか、日陰を好むのか、週に何回水やりをして欲しいかなどを書き込むようになっています。
コロナウイルスの影響で今年は実施が難しいのかもしれないと思い調べてみると、限られた店舗で、今年もサービスを継続してくれていました。預けた日から丸一日はスタッフが触らなくてもいいように、「水やりを済ませてから持ってきてください」という注意書きがありました。驚くのは、このサービスが無料だということ!植物にも人にもやさしいこんなサービスがあるのは、環境に配慮した商品を扱うオーガニック・スーパーマーケットならではで、心が温まります。
8月の終わりになるとスーパーマーケットや文具店には“Rentrée(新学年・新学期)”の準備に向けたコーナーが作られます。娘たちの学校では、夏の間に9月の新学年のスタートに向けて学用品のリストが届きます。何色のどういった形式のノートを何冊というように、サイズまで細かく指定されたノートやペンなどを買い揃え、ひとつひとつに名前を書いたり付けたりします。これはおそらくどの国でも同じ習慣ですね。
日本であまり見ないのは、ロールで売られている糊のついたビニールシート。ヨーロッパでは、書き込んで使用するワークブックなどは別ですが、分厚い教科書は学年毎に、何年間かお下がりで使い回していきます。そのため表紙などがなるべく汚れたり破れたりしないように、毎年カバーをかけて使うのです。
表紙の裏には名前の一覧のラベルがあって、その本で勉強してきた子どもたちの名前と年度が並んでいます。それぞれ違ったペンと筆跡で書かれた歴代の持ち主の最後に、娘の名前が加わるのはなんだか楽しい瞬間です。
本のサイズに合わせてビニールを切り、糊がつかないように、曲がらないように、きれいに貼り付けるのはなかなか神経を使う作業。けれど、知らず知らずに目に入る持ち主のリストから、ものを長く大切に使う気持ちが育っているようにも思えるのです。
Text: Seiko itoh