Vol.14
ミモザの黄色に始まり、木蓮、ヒヤシンス、チューリップなど、少し歩くだけでも春の色が目に飛び込んでくる季節です。長いウイルスとの日々に加え、胸の痛くなるような世界のニュース。誰もが疲れを感じていた冬の名残りを、あかるい日差しとお花が吹き飛ばしてくれたように感じています。
3月の半ばには医療施設、公共交通機関以外はマスクの着用が義務ではなくなりました。子どもたちにとってもおよそ2年ぶりのマスクなしの登校。政府から正式な発表があると、娘たちの通う学校からも、ノーマスク解禁を知らせるメールが保護者宛に送られてきました。
興味深かったのは、『健康上に深刻な理由がある場合を除いて、顔を隠す目的でのマスクの着用は禁止』とわざわざ記載があったこと。長引くコロナで、『半分顔を隠しながらコミュニケーションをとること』を『不完全なコミュニケーション』とし、そこからくる子どもたちへの精神的な影響の大きさについて書かれていました。
もちろんマスクを外すことで起こりうる新たな感染拡大については賛否両論の意見が聞かれます。けれども『春の訪れともうひとつの良いお知らせ』という書き出しのメールに子どもたちだけでなく、心が軽くなった保護者も少なくなかったと思います。
そしてこの時期に街中で見かけるものが、もうひとつ。4月1日「Poisson d’Avril(ポワソンダブリル)」のお祝いのためのお魚の形のチョコレートやお菓子です。
フランスではエイプリルフールは、『4月のお魚』の日。魚の形に切り取った紙きれを貼り付けるいたずらが許されていて、子どもたちは一日中家族や、お友だち、先生たちの背中をこっそり狙っています。
今年は先週まで半袖でお日様を浴びていたはずなのに、雪が舞うほど冷え込む4月の始まりになりました。学校から帰ってきてコートを脱いだ娘の背中には「Poisson chat」という猫バージョンのユーモラスなお魚がくっついていました。
Text:Seiko itoh